カズオ・イシグロ(土屋政雄 訳)『わたしを離さないで』(2012年、早川書房)
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読みました。
2017年のノーベル文学賞の受賞で、一時期どの書店にも大量に平積みされていましたね。
私は、受賞をきっかけに作者を知りました。
1954年長崎出身の日系イギリス人で、ご両親とは日本語で会話していたらしいですが、日本語は母語ではないようです。
筆名から、どことなく日本文学のような感覚で読み始めてしまいますが、
まったくもって海外文学です。
谷崎潤一郎に影響を受けた、との言説を見かけましたが、
翻訳のせいもあってか、とくに類似性は感じなかったですね。
あらすじについて書きたいところですが、同著の解説(英米文学研究者 柴田元幸)にもあるように、
「(前略)この小説は、ごく控えめに言ってもものすごく変わった小説であり、作品世界を成り立たせている要素一つひとつを、読者が自分で発見すべきだと思うからだ。予備知識は少なければ少ないほどよい作品なのである。」
ぜひ、何も知らない状態から読んでみてください。
読み始めは、「これは一体どういう状況なのか?」「主人公はいったい何者なのか?」「どこまでが現実世界にあることで、どこからがフィクションなのか?」等々、はてなだらけでした。
中盤以降、次第に世界が明らかになってきます。
そして、読むのを中断することが出来なくなります。
「入念に構成された」との評価をされることが多いようですが、
本当にそのとおりだと思います。全面的に首肯。
その構成の秀逸さに、正直ぞっとするくらいです。
読み手の感情は後半になるにつれて大きく揺さぶられますが、
ものがたり自体は、超然・悠然と、“細部まで抑制がきいた”描写が続いていきますので、前半から丁寧に情況を思い描きながら読み進めていくと良いと思います。
映画化、ドラマ化(舞台を日本に置き換えて)もされていますね。
気になります。
そもそも翻訳ではなく、原著でも読めたらいいなぁ・・・(英語力が;)
- 作者: Kazuo Ishiguro
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好き嫌いが分かれる作家かもしれませんが、
1作品は読んでみて損はないのではないかと思います。
オススメします。
ではでは、今回はこの辺りで。
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