ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』
だいぶご無沙汰しておりました。
webサイトを立ち上げたので(asakuno-lab)、
そちらに完全移行しようかとも思っていましたが、
こちらは書き続け、そのバックアップやアーカイブ、修正更新用としてwebサイトを活用していこうかと思っています。
さて、今回紹介するのは、こちらの本。
タイトルを見て、「胡散臭そう」と思われた人も多いのではないでしょうか。
(実際、知人の第一声がそれでした)
内容は、むしろ逆です。
「本を読んだ」とはどういうことか、という定義に始まり、
最終的には、読んでいない本について語ることは創造的な活動である、と結論づけています。
そして、その結論を論証する題材として、
古今東西の小説や映画に垣間見える「読んだ」「知っている」という状態について、
具体的に分析していきます。
ここが、めちゃくちゃ面白い。
単純な読書案内としてもとても面白いです。
(思わず検索して邦訳があるか確認してしまった本もあります)
さて、この本にここまで共感し、面白いと感じた理由ですが、
私は元々、研究者を目指して必死に本を読んでいた時期がありまして、
その際に「当然読んでいるはずの古典」やら、「読まなければいけない先行研究」に圧倒されて、自分を見失い、とても精神的に追い詰められた状況に陥っていました。
おそらく、同じような苦しい状況下で(読まなくてはいけない・理解しなくてはいけない膨大な書籍に押しつぶされそうになりながら)研究を続けている大学院生もとても多いのではないかと思います。
そういう人にこそ、読んで欲しい。
そして、肩の荷を少し軽くして欲しい。
この本では、
「読書義務」「通読義務」「本を語るには読んでいなければならない」
というタブー視されている主題の否定から始まります。
同じような読書論は本屋に行けば何種類も発見できますが、
このテーマだけに絞って定義付けをし、ここまで分析している本は
あまりないように思います。
「研究書を読んでいない」「研究書を正確に理解できていない」という
【やましさ】から、少しでも楽になれる大学院生が増えることを切に願います。